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サバクトビバッタはなぜ大発生?2026年FAO最新情報と日本への飛来リスクを徹底解説

橘 澪 橘 澪 • 更新: • 公開: • 読了約 26 分
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2026年11月4日現在、サバクトビバッタをめぐる状況は再び警戒を要する局面にある。国連食糧農業機関(FAO)の最新資料によると、2026年9月の段階では世界の主要な発生地域全体で大きな活動は確認されていなかった一方、モーリタニア南部では繁殖が続いている。10月28日を基準日とするFAOの国別報告では、11月にタガント州、ブラクナ州、トラルザ州で幼虫や成虫の集団が形成される可能性が示され、農作物を守るための防除活動が必要になると予測された。

加えて、日本の国際農林水産業研究センター(国際農研)は、2025年9月から12月にかけてモーリタニアで異例の大発生を確認し、2026年1月に調査成果を公表した。なぜ砂漠のバッタは突然巨大な群れになるのか。雨による繁殖環境の変化、孤独相から群生相への変化、風を利用した長距離移動、そして日本への飛来可能性まで、FAOと国際農研の研究成果を軸に実態を整理する。

【2026年最新】サバクトビバッタの発生状況は?FAOが警戒するモーリタニアの現状

サバクトビバッタ

2026年のサバクトビバッタを理解するうえで、まず押さえておきたいのがFAOの発生状況報告である。

FAOは、世界各地の発生情報、気象データ、植生状況、衛星画像などを組み合わせ、サバクトビバッタの移動と繁殖を監視している。定期的な月次報告に加え、危険が高まった場合には追加の警報や速報を発信する仕組みだ。

2026年11月時点で注目すべき3つの情報

最初に確認したいのは、2026年10月13日に公表された「Desert Locust Bulletin No.576」である。対象は2026年9月。FAOは西部・中央・東部の主要な繁殖地域全体について、9月の発生状況はおおむね落ち着いていたと説明している。

しかし、これだけでサバクトビバッタ問題が終息したとは判断できない。

2026年10月28日を基準日とするFAOのモーリタニア国別報告では、同国南部で繁殖が継続しており、11月にはタガント州、ブラクナ州、トラルザ州で幼虫や成虫の集団が形成される可能性が示された。農作物への被害を防ぐため、防除活動が必要になる可能性も指摘されている。

つまり、2026年11月の焦点は世界規模での全面的な大発生ではなく、モーリタニア南部を中心とした局地的な繁殖と、その後の集団形成をどこまで早く抑えられるかにある。

モーリタニアで確認された異例の大発生と国際農研の調査

国際農研が2026年1月23日に公表した出張報告書「サバクトビバッタの行動生態観察および日本への携行輸入」には、重要な現地情報が記録されている。

2025年9月から12月にかけて、モーリタニアでは異例の大発生が発生。国際農研は現地の国立サバクトビバッタ防除センターと協力し、アグジョージト周辺で野外調査を実施した。

調査対象は、ふ化直後の幼虫、成長途中の幼虫、成虫というすべての発育段階に及ぶ。特に注目されたのは、個体がどのように集まり、どのような条件で集団行動を示すのかという集合性である。

また、気温や地温に対する反応を調べ、バッタの分布パターンと体温調節の仕組みについても研究が進められた。

2020年から2026年までの主な経緯と関係機関

時期・主体 主な出来事 関係・意味
2018~2020年 異常降雨とサイクロンが繁殖環境を形成 2020年の大発生につながる気象背景
2020~2021年 東アフリカ・南アジアで大規模発生 農業と食料安全保障に深刻な影響
2025年9~12月 モーリタニアで異例の大発生 国際農研と現地防除機関が野外調査
2026年1月23日 国際農研が現地調査報告を公表 集合性と温度反応に関する知見を収集
2026年7月 FAOがサヘル地域の夏季繁殖を予測 モーリタニアでの繁殖継続に警戒
2026年9月20~25日 モーリタニアで散布ドローンの訓練 FAOの地域委員会とCNLAが防除能力を強化
2026年10月13日 FAOが9月の月次速報を公表 主要3地域全体ではおおむね平穏
2026年10月28日 モーリタニア国別報告を更新 南部の繁殖継続と11月の集団形成を予測

この問題には複数の機関が関わっている。FAOは国際的な監視・予測・調整を担い、国際農研は生態や防除技術の研究を進める。モーリタニアの国立サバクトビバッタ防除センター(CNLA)は現地での調査や防除活動を支える実施機関だ。

加えて、西部地域の防除を担当するFAOの地域委員会CLCPROと、中央地域を担当するCRCも連携している。国境を越えて移動する害虫だからこそ、一国だけで対応するのは難しい。

【大発生の理由】砂漠に雨が降るとなぜバッタが爆発的に増えるのか

サバクトビバッタの大発生には、単純に個体数が増えるという以上の複雑な仕組みがある。

その根本には、砂漠特有の気象条件と繁殖戦略が存在する。重要なのは、干ばつだけでも大雨だけでもなく、雨が降るタイミングと、その後に続く環境条件である。

普段は少数しかいないバッタが繁殖を始める

サバクトビバッタの通常の生息地は、西アフリカのモーリタニアから中東、インドに至る乾燥・半乾燥地域である。

平穏な時期には個体数が少なく、互いに距離を保って生活する孤独相のバッタが中心となる。餌となる植物も少なく、繁殖活動が活発になる条件は限られている。

ところが、まとまった雨が降ると環境は一変する。

砂漠の地表に水分が供給されることで野草が成長し、餌資源が急増する。成虫は十分な栄養を得て成熟し、交尾や産卵を始める。加えて、湿った砂地は卵を産む場所として適している。

この条件が広範囲で続けば、次世代の幼虫が大量にふ化し、個体数が急激に増える。

産卵から成虫になるまでの仕組み

サバクトビバッタのメスは、腹部を伸ばして地面を掘り、主に地下5~15センチメートル程度の湿った土壌に卵を産む。

FAOの生態資料によると、卵は通常約2週間でふ化する。ただし、環境条件によって10~65日程度の幅がある。ふ化した幼虫は翅を持たない状態で成長し、5~6段階の脱皮を経て、およそ30~40日で成虫になる。

成虫になった後も成熟まで時間が必要だが、繁殖に適した環境が続けば次々と世代が交代する。

FAOが示す個体数増加の目安では、条件が整った場合、1世代ごとに約20倍になる可能性がある。3か月で約20倍、6か月で約400倍、9か月では約8,000倍という指数的な増加だ。

もちろん、これは好適な環境が続いた場合の理論的な増加目安であり、実際の個体数は降雨、餌、天敵、防除などの影響を受ける。それでも、繁殖条件がそろったときに短期間で危機が拡大する理由を理解するには十分な数字である。

2020年の大発生はなぜ起きたのか

2020年から2021年にかけての大発生は、こうした仕組みが大規模に連鎖した事例だった。

FAOや国際農研の解説によると、2018年から2020年にかけてのインド洋ダイポール現象などに伴う気象の変化や、サイクロンによる異常降雨が重要な背景となった。

2018年にはサイクロンのメクヌやルバン、2019年にはパワン、2020年にはガティなどが発生し、東アフリカやアラビア半島周辺に大雨をもたらした。

とりわけ2019年12月のサイクロン・パワン後には、アフリカの角地域で洪水が発生し、繁殖に適した環境が形成された。植物が増え、湿った土壌が広がったことで、バッタの繁殖が長期間続く条件が整ったのである。

2020年5月のFAO報告では、東アフリカ、アラビア半島、南西アジアに広がる大規模な発生が問題となり、同年1月以降、国際的な防除活動が本格化していた。

ここから分かるのは、サバクトビバッタの大発生が単なる雨不足や異常気象の問題ではないということだ。乾燥地帯における降雨の変化が、植物の成長、産卵場所、繁殖速度、個体同士の接触を連鎖的に変化させるのである。

【群生相と孤独相】サバクトビバッタの相変異が巨大な群れを生む

サバクトビバッタの最大の特徴は、同じ種類の昆虫でありながら、周囲の個体密度に応じて行動や体の特徴を変えることだ。

この現象を「相変異」と呼ぶ。大発生のメカニズムを理解するうえで欠かせない生物学的な仕組みである。

孤独相は互いを避け、群生相は集団で行動する

個体密度が低いときに見られるのが「孤独相」だ。

孤独相の個体は、基本的にほかの個体との接触を避けながら生活する。食べ物を求めて移動するものの、大規模な集団を形成することは少ない。

一方、個体密度が高くなり、ほかのバッタと接触する機会が増えると、群生相への変化が始まる。

群生相になると、行動が大きく変わる。ほかの個体を避けるのではなく、むしろ引き寄せられるように集まり、集団で移動するようになる。

国際農研の解説では、行動面の群生相化は数時間で起こり得る一方、体色や形態などの変化には数日から数週間かかると説明されている。

群生相になると体の特徴まで変わる

孤独相と群生相では、外見にも違いが現れる。

FAOの資料によれば、孤独相の成虫は褐色系であることが多い。群生相では、未成熟の成虫はピンク色、成熟した成虫は黄色になる傾向がある。

この色の変化は、単なる環境への一時的な反応ではない。個体密度に応じて、行動や生理、形態が変化する相変異の一部である。

また、群生相化した個体は孤独相に比べて発育・繁殖能力が高まるとされ、個体数の急増にも関係している。

なぜ群れになることが危険なのか

個体数が増えるだけなら、餌が不足した時点で自然に分散する可能性もある。しかし、群生相化すると個体同士が集まり、同じ方向へ移動するようになる。

その結果、広範囲にわたって植物を食べ尽くす巨大な群れが形成される。

加えて、群れの中で繁殖が続けば、新しい幼虫集団が生まれる。つまり、群生相化は大発生の結果であると同時に、次の大発生を加速させる要因でもある。

1921年には、ロシアの昆虫学者ボリス・ウバロフがトノサマバッタの相変異を報告した。これを契機に、バッタが個体密度に応じて異なる生活様式を示すという研究が発展してきた。

サバクトビバッタの研究でも、この相変異をどの段階で検出し、どの場所で防除するかが重要な課題となっている。

【移動距離と農作物被害】風に乗る群れは1日150km以上移動する

サバクトビバッタが世界的な食料問題として扱われる理由は、繁殖力だけではない。もう一つの大きな特徴が、風を利用した長距離移動能力である。

風速16~19kmで飛び続ける移動能力

FAOの説明によると、サバクトビバッタの群れは通常、風に乗って時速約16~19キロメートルで移動する。

条件が整えば、1日で約130~150キロメートル、あるいはそれ以上進むこともある。

群生相の成虫は主に日中に飛び、日の出から約2時間後に飛翔を開始し、日没前に地上へ戻る。風向きや風速、気温が移動方向と距離を左右する。

また、紅海のような約300キロメートルの海域を横断することもある。1988年には西アフリカからカリブ海まで約5,000キロメートルを10日ほどで移動した記録もFAOに残されている。

国際農研の解説でも、季節風を利用して冬・春・夏の繁殖地域を移動する特徴が紹介されている。

500種類以上の植物を食べる広食性

サバクトビバッタの食性も、農業被害を深刻化させる理由の一つだ。

国際農研によれば、サバクトビバッタは500種類以上の植物を食べる広食性の昆虫である。

主な食害対象には、次のような農作物が含まれる。

  • トウジンビエなどの雑穀類
  • ソルガム
  • トウモロコシ
  • コムギ
  • サトウキビ
  • ワタ
  • 果物や野菜
  • 牧草や野生植物

特徴的なのは、植物の種類だけでなく、成長段階によっても食べるものの好みが変わる点だ。

なお、イネは水田で栽培されることが多いため、サバクトビバッタによる食害は比較的少ないと国際農研は説明している。

1平方キロメートルの群れが3万5,000人分の食料を食べる

FAOが示す被害規模の指標も衝撃的だ。

サバクトビバッタの群れは、1平方キロメートル当たり最大で約8,000万匹の成虫を含むことがある。群れの規模は1平方キロメートル未満から数百平方キロメートルに及ぶ場合もある。

FAOによれば、1平方キロメートルの群れが1日に消費する食料は、約3万5,000人分に相当する。

この数字が示すのは、単に畑の植物が食べられるという問題ではない。農作物の収穫量が減少すれば、農家の収入が減り、家畜の飼料も不足する。食料価格が上昇すれば、地域住民の生活全体に影響が広がる。

特に農業や牧畜への依存度が高い地域では、収穫の失敗が家畜の売却や食料不足につながり、生活基盤そのものが揺らぐ。

【日本への飛来可能性】サバクトビバッタが日本に上陸する危険性は?

巨大な群れが数百キロメートル以上移動すると聞けば、日本にも飛来するのではないかと不安になる人は少なくない。

しかし、アフリカや中東から日本までの距離を考えると、飛翔能力だけで単純に到達できるわけではない。

日本への飛来はゼロではないが、可能性は極めて低い

国際農研は、日本への飛来について、科学的根拠が十分ではないため断言できないという見解を示している。

仮に日本へ到達するには、少なくとも次の条件が重なる必要がある。

  • 出発地域に大量のサバクトビバッタが存在すること
  • 長距離移動に適した風向きや気象条件が整うこと
  • 飛翔を継続するためのエネルギーを十分に蓄えていること
  • 途中で低温や悪天候などによって飛翔を妨げられないこと

サイクロンやジェット気流によって数百キロメートル以上移動する場合はあるものの、アフリカから東アジアまでの距離は非常に長い。

また、過去の分布記録では、サバクトビバッタの東方への飛来はインド東部付近までが主な範囲とされてきた。

日本の気候は繁殖・定着に適しているのか

日本への侵入を考える際には、飛来するかどうかだけでなく、その後に繁殖できるかどうかも重要になる。

国際農研の解説では、サバクトビバッタの発育には温度条件が大きく関係すると説明されている。

例えば、幼虫は19度以下では発育できず、卵も10度以下の環境に2週間置かれるとほぼ死滅するとされる。また、成虫は20度以下では性成熟が進最初に、繁殖が難しくなる。

加えて、通常の生息地域は年間降水量が比較的少ない乾燥・半乾燥地帯である。降水量の多い日本で、長期的に繁殖を続けられるかどうかは別の問題となる。

日本にはトノサマバッタなど、国内の環境に適応した別種のバッタが生息している。サバクトビバッタが日本へ一時的に飛来する可能性と、国内に定着して大発生する可能性は分けて考える必要がある。

トノサマバッタや南米のバッタとの混同にも注意

もう一つ注意したいのが、異なる種類のバッタを同じものとして扱う誤解だ。

南米で問題となったミナミアメリカトビバッタは、サバクトビバッタと同じ属に分類されるものの、別種である。学名はSchistocerca cancellataで、サバクトビバッタのSchistocerca gregariaとは異なる。

日本のトノサマバッタも大発生することがあるが、こちらも別種だ。

したがって、海外の映像で大量のバッタが確認されたからといって、それがすべてサバクトビバッタとは限らない。種類と発生地域を確認することが、正確な情報を見極める第一歩になる。

【防除方法と国際農研の研究】殺虫剤だけに頼らない対策は可能なのか

サバクトビバッタの防除は、発生してから群れを追いかけるだけでは間に合わない場合がある。

そのため、現在の対策では、繁殖地の監視、早期発見、幼虫集団の把握、効率的な薬剤散布を組み合わせる総合的な防除が重視されている。

化学殺虫剤と微生物を利用した防除

現在の主要な防除方法は、化学薬剤の散布と昆虫病原糸状菌を利用した生物的防除である。

国際農研の解説では、Metarhizium属の糸状菌を利用した製剤が紹介されている。これは昆虫に感染する病原性の糸状菌を利用する方法で、化学薬剤への依存を減らす選択肢の一つとなる。

化学薬剤による防除では、車両や航空機を使って群れに直接散布する方法が採用されている。

また、ULV(Ultra Low Volume)と呼ばれる少量散布技術も利用される。少ない薬剤量で広い範囲を効率よく処理することを目的とした方法だ。

ただし、薬剤散布には環境や非標的生物への影響を考慮する必要がある。発生場所や個体数、周辺の生態系に応じて、適切な防除方法を選ぶことが求められる。

2026年はドローンを使った防除技術の訓練も進む

2026年9月には、モーリタニアで防除用ドローンの訓練が実施された。

FAOの西部地域砂漠バッタ防除委員会(CLCPRO)と中央地域砂漠バッタ防除委員会(CRC)が共同で実施し、モーリタニアの国立サバクトビバッタ防除センター(CNLA)も協力した。

9月20日から25日にかけてティグエントで開催された訓練では、ドローンを活用した早期対応と、対象を絞った精密な防除活動の能力強化が進められた。

従来の車両や航空機による散布に加え、ドローンを利用することで、発生場所や地形に応じた対応の選択肢が広がる。

これは単に新しい機械を導入するという話ではない。現地調査で発生場所を特定し、必要な範囲に適切な防除を実施するという、予防的な管理体制の強化につながる取り組みである。

国際農研がモーリタニアで解明しようとしていること

国際農研が力を入れているのは、バッタの行動生態を理解し、防除の効率を高める研究だ。

群生相のバッタが、いつ、どこで、どのように集まるのかが分かれば、群れ全体に大量の薬剤を散布しなくても、効果的な防除が可能になるかもしれない。

2025年9~12月の調査では、ふ化幼虫から成虫までを対象に、集合性と温度への反応を調べた。気温と地温を考慮しながら、どの場所にバッタが集まりやすいのかを把握しようとする研究である。

加えて、2025年5月29日には、国際農研がフランス国際農業開発協力センター(CIRAD)、モーリタニア国立サバクトビバッタ防除センターと共同で、乾燥環境への適応に関する研究成果を公表した。

研究では、乾燥条件下でふ化した幼虫は、湿潤条件下の幼虫より小型である一方、体内に多くの卵黄を残していることが判明した。

加えて、餌が得られない条件では、こうした幼虫は通常の個体と比べて約2倍長く生存した。卵黄をふ化後のエネルギー源として温存することで、餌が乏しい砂漠環境を生き延びる仕組みが示されたのである。

この成果は国際科学誌「PNAS Nexus」に掲載された。大雨によって繁殖が進む仕組みだけでなく、乾燥が戻った後も個体が生き残る能力を理解するうえで重要な研究だ。

【プロの結論】防除の成否を分けるのは大発生前の情報収集

サバクトビバッタ対策で最も重要なのは、巨大な群れが形成されてから対応するのではなく、繁殖の初期段階を見つけることである。

大群になってからでは、移動範囲が広くなり、被害地域も拡大する。しかも、風向きや天候によって群れの位置が変わるため、現場での追跡には限界がある。

そのため、衛星画像による植生・土壌水分の監視、現地の専門家による調査、気象予測、幼虫集団の発見を組み合わせる必要がある。

国際農研が取り組む行動生態研究は、この早期発見と効率的な防除をつなぐものだ。FAOによる国際的な監視、CNLAによる現地対応、研究機関による生態解明が一体となって初めて、被害を抑える体制が整う。

2026年9月2日に公表された国際農研の研究プロジェクトでも、野外生態に基づくサバクトビバッタ防除技術の開発が課題として掲げられている。今後は化学薬剤の使用量だけを減らすのではなく、発生予測の精度を上げ、必要な場所に必要な対策を届けることが重要になる。

【サバクトビバッタ】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:2026年11月現在、サバクトビバッタは大発生しているのですか?
A1:FAOの2026年9月速報では主要な繁殖地域全体の状況はおおむね落ち着いていました。ただし、10月28日付のモーリタニア国別報告では南部の繁殖継続が確認され、11月にタガント州、ブラクナ州、トラルザ州で幼虫や成虫の集団が形成される可能性が示されています。世界全体での大発生と、特定地域の繁殖リスクは区別する必要があります。

Q2:サバクトビバッタはなぜ突然大発生するのですか?
A2:大雨によって植物が増え、湿った土壌が産卵場所になることで繁殖が活発化するためです。加えて、個体密度が高まると相変異が起こり、孤独相から群生相へ変化します。群生相になると集団で移動するようになり、大規模な群れが形成されます。

Q3:サバクトビバッタは日本に飛来する可能性がありますか?
A3:可能性を完全には否定できませんが、国際農研は複数の気象条件や生物学的条件が重なる必要があり、その可能性は極めて低いと説明しています。また、日本の気候や冬季の低温は、長期的な繁殖・定着にとって障壁になると考えられています。

Q4:サバクトビバッタは1日に何キロメートル移動しますか?
A4:FAOによると、風に乗って1日約130~150キロメートル以上移動する場合があります。風向きや気象条件によって移動距離は変化します。

Q5:サバクトビバッタは何種類の植物を食べますか?
A5:国際農研の解説では500種類以上の植物を食べるとされています。トウモロコシ、ソルガム、コムギ、サトウキビ、ワタ、果物など、幅広い農作物が食害対象になります。

Q6:サバクトビバッタの防除には何が使われますか?
A6:化学殺虫剤の散布や、Metarhizium属の昆虫病原糸状菌を利用した生物的防除が主な方法です。車両や航空機、ドローンなどを活用した散布技術も導入されています。早期発見と適切なタイミングでの対応が重要です。

まとめ:2026年のサバクトビバッタ問題は早期発見と国際連携が鍵

サバクトビバッタは、学名Schistocerca gregariaという移動性害虫であり、雨による繁殖環境の変化と、孤独相から群生相への相変異によって大発生する。

500種類以上の植物を食べ、風に乗って1日に150キロメートル以上移動する能力は、農業や食料供給に大きな脅威となる。

2026年11月4日時点では、FAOの最新資料から、世界全体が再び2020年規模の危機に直面していると判断することはできない。一方、モーリタニア南部では繁殖が続いており、11月の集団形成に対する警戒が必要な状況だ。

国際農研によるモーリタニアでの現地調査、乾燥適応に関する研究、FAOによる衛星監視と予測、CNLAによる現地防除、ドローンを活用した新しい技術は、それぞれが大発生を防ぐための重要な要素となっている。

今後の動向を判断する際は、単に「バッタが増えた」というニュースだけを見るのではなく、発生地域、幼虫と成虫の割合、群生相化の進行、降雨状況、FAOの予測、防除面積を総合的に確認したい。

サバクトビバッタ問題の本質は、巨大な群れを駆除することだけではない。群れが生まれる前の小さな変化を捉え、農作物への被害が広がる前に対応できるかどうかにある。2026年以降も、国際的な監視体制と現地の生態研究が、世界の食料安全保障を左右する重要な役割を担っていく。

主な参照資料・情報源

- FAO「Desert Locust Bulletin No.576」(2026年9月分)
- FAO「GIEWS Country Brief: Mauritania」(2026年10月28日基準)
- 国際農研「サバクトビバッタの行動生態観察および日本への携行輸入」(2026年1月23日)
- 国際農研「サバクトビバッタについて」
- 国際農研・CIRAD・モーリタニア国立防除センター共同研究(2025年5月29日)
- FAO「Locust Watch」および2026年9月のドローン防除訓練報告

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