「親の介護をしたくない」「親の面倒を見るのが苦痛」「自分の生活や仕事を犠牲にしてまで介護する必要があるのだろうか」。そんな悩みを抱えていても、親を見捨てるような気がして、誰にも相談できずにいる人は少なくありません。
実際、2025年の厚生労働省「国民生活基礎調査」では、在宅で介護を必要とする人の主な介護者について、46.1%が同居している人という結果が公表されました。加えて、要介護者と同居する主な介護者のうち、75歳以上同士の割合は37.1%に達しています。調査結果は2026年7月15日に公表され、介護が家族、とりわけ高齢の家族に集中している実態が明らかになりました。
ただし、親の介護をしたくないからといって、必ずしも自分が直接介護を引き受けなければならないわけではありません。民法877条の扶養義務と実際の介護を行う義務は区別して考える必要があります。介護保険サービス、地域包括支援センター、施設入居、きょうだいとの費用分担、介護休業制度などを組み合わせれば、親と同居せず、自分の仕事や生活を守りながら支援する方法もあります。
この記事では、2026年11月時点の制度や公的統計を踏まえ、親の介護を拒否できる法的な範囲から、具体的な相談方法、費用、仕事との両立まで整理します。
【理由を整理】親の介護をしたくないと思うのはなぜ?よくある7つの本音
親の介護をしたくないと感じる理由は、単純に親を嫌っているからとは限りません。介護によって失われる時間やお金、精神的な負担、これまでの親子関係など、複数の事情が重なっているケースがあります。
まずは、なぜ介護を引き受けたくないのかを整理してみましょう。
1. 自分の仕事や生活を犠牲にしたくない
現役世代にとって、親の介護は仕事や家庭生活に大きな影響を及ぼします。
通院の付き添い、買い物、食事の準備、役所への申請、突然の体調不良への対応など、介護は決められた時間だけで終わるものではありません。
遠距離に住んでいる場合は、移動時間や交通費も負担になります。
特に、子育て中の人や住宅ローンを抱える人にとって、親の介護のために勤務時間を減らしたり、転職したりすることは簡単な決断ではありません。
自分の生活を守りたいという気持ちは、親を大切に思っていないことと同じではありません。
2. これまでの親子関係が悪く、世話をしたくない
親との関係が悪い場合、介護への抵抗感はさらに強くなります。
例えば、次のような事情です。
- 子どものころから親に厳しく支配されてきた
- 暴言や暴力、精神的な虐待を受けた経験がある
- 成人後も親から金銭的な援助を要求されている
- 親が自分の意見を聞かず、介護の方法まで一方的に決めようとする
- 長年疎遠で、現在も関わりを持ちたくない
介護は、身体的な作業だけではありません。相手との継続的なコミュニケーションが必要になるため、過去のつらい経験が再びよみがえることもあります。
親子だからという理由だけで、無理に関係を修復したり、同居したりする必要はありません。
過去に虐待や深刻な対立があった場合は、その事情を地域包括支援センターや法律専門家に伝え、直接介護を避ける方法を検討できます。
3. 介護の精神的・身体的負担が大きい
介護では、食事や入浴、排せつ、着替えなどの日常的な支援が必要になる場合があります。
認知症が進行すると、本人が介護を拒否したり、同じ質問を繰り返したり、夜間に起き出したりすることもあります。
こうした状態が続けば、介護者自身の睡眠や健康にも影響します。
介護を始める前から、長期間にわたって自分が対応し続けられるか不安になるのは自然なことです。
4. きょうだいが協力せず、自分だけに負担が集中する
親の介護で特に深刻になりやすいのが、きょうだい間の不公平感です。
例えば、次のような状況です。
- 長男や長女だからという理由で介護を押し付けられる
- 実家の近くに住んでいる人だけが毎日の世話をする
- 遠方のきょうだいは口だけ出して実際には動かない
- 介護費用を自分だけが支払っている
- 親の財産や相続については平等を求められる
介護をしていない人が介護方法に口を出す一方、実際の負担を引き受ける人が疲弊するケースもあります。
この問題は、感情的な話し合いだけでは解決しにくいため、費用、作業、緊急時の対応を分けて整理する必要があります。
5. 介護にかかる費用を負担できない
介護保険を利用しても、すべての費用が無料になるわけではありません。
サービスの自己負担、食費、居住費、日用品代、通院費などが発生します。
自分自身の生活費や子どもの教育費を確保しながら、親の費用まで負担することに不安を感じる人もいます。
6. 自分自身の健康や家庭を守りたい
介護をする人にも、健康状態や家庭の事情があります。
持病がある、育児中である、配偶者の介護も必要になっているなど、親の介護を優先できない事情はさまざまです。
無理に介護を続けて自分まで倒れてしまえば、結果的に本人と親の双方にとって不利益になります。
7. 介護がいつまで続くのか分からない
介護の大きな特徴は、終了時期を事前に予測しにくいことです。
数か月で状況が改善する場合もあれば、数年単位で支援が必要になる場合もあります。
仕事を辞めたり、実家に戻ったりする決断をすると、元の生活に戻ることが難しくなる可能性もあります。
そのため、最初から家族だけで介護する前提を置かず、外部サービスを利用する体制を整えることが大切です。
【法律上の答え】親の介護は子どもの義務?民法877条で拒否できる範囲を解説
「親の面倒を見るのは子どもの義務」と言われることがあります。しかし、法律上の扶養義務と、実際に身体介護をすることは同じではありません。
ここを理解しておくと、親の介護を断ることに対する不安を整理できます。
民法877条が定める扶養義務とは
民法877条第1項では、次のように定められています。
直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
直系血族には、親と子、祖父母と孫などが含まれます。
つまり、親が経済的に困窮し、自力で生活を維持できない場合などには、子どもに扶養義務が生じる可能性があります。
また、この義務は子どもだけが親に対して負うものではありません。法律上は、親も子どもに対する扶養義務を負います。
ただし、ここで注意したいのは、扶養義務があるからといって、必ず自宅で同居して入浴や食事、排せつの介助をしなければならないわけではないという点です。
扶養の具体的な方法や程度は、本人の必要性や扶養する側の経済状況などによって判断されます。
扶養義務と直接介護義務の違い
法律上の扶養義務は、生活を維持するために必要な支援をする責任に関係するものです。
一方、日常的な身体介護や同居について、すべての成人した子どもに一律の義務が課されているわけではありません。
整理すると次のようになります。
| 項目 | 扶養義務 | 直接介護 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 民法877条など | 一律の同居・身体介護義務を定めた規定はない |
| 主な内容 | 必要に応じた経済的・生活上の扶養 | 食事、入浴、排せつ、通院などの支援 |
| 判断材料 | 親の必要性、子の資力、生活状況など | 本人の状態、家族の状況、利用できるサービスなど |
| 負担方法 | 金銭援助や引取りなど | 家族による介護、専門サービスなど |
| 争いがある場合 | 家庭裁判所で調停・審判が可能 | 介護体制について自治体や専門職と調整 |
なお、扶養の方法について当事者間で合意できない場合、家庭裁判所が具体的な方法を決めることがあります。裁判所の案内でも、引取扶養や扶養料の支払いなどが対象として説明されています。
親の介護を拒否することはできる?
実際には、次のように分けて考える必要があります。
① 同居を断る
親と同居することを一律に強制する法律上の規定はありません。別居したまま介護サービスや施設を利用する方法があります。
② 身体介護を断る
入浴や排せつなどの身体介護を自分で行わず、訪問介護事業者や施設に依頼することができます。
③ 介護費用の負担を断る
自分の収入や生活状況に関係なく、親の費用を無制限に支払わなければならないわけではありません。ただし、扶養義務そのものが常に消えるわけではなく、親の生活状況や自分の資力などによって具体的な判断が必要です。
④ 親との連絡や関係を制限する
親との関係が悪い場合、直接連絡を取らず、自治体や専門家を窓口にして支援体制を調整する方法もあります。
ただし、すでに自分が介護を引き受けている場合や、契約などによって別の責任を負っている場合には、個別の検討が必要です。
きょうだいがいる場合、誰が親を扶養するのか
民法878条では、扶養義務を負う人が複数いる場合、扶養する順序について話し合いがまとまらなければ家庭裁判所が定めるとしています。
加えて、民法879条では、扶養の程度や方法について、扶養を必要とする人の需要、扶養する人の資力、その他一切の事情を考慮すると定めています。
したがって、長男だから、長女だから、独身だからという理由だけで、すべての介護を引き受けることが法律上自動的に決まるわけではありません。
きょうだいの収入、健康状態、居住地、仕事、家庭の事情なども考慮されます。
【現実的な対処法】親の介護をしない選択肢と地域包括支援センターの活用方法
親の介護を自分で引き受けたくない場合、最初に検討したいのが公的な相談窓口です。
介護をしないという選択は、親を放置することとは違います。専門職や公的サービスにつなぎ、自分が担える範囲を明確にすることが現実的な対応です。
最初の相談先は地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の生活や介護に関する総合相談窓口です。
市区町村が設置主体となり、保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が連携して相談に対応します。
主な相談内容は次のとおりです。
- 親の介護を自分で引き受けられない
- 親が一人暮らしをしていて心配
- 認知症の疑いがある
- 介護保険サービスを利用したい
- きょうだいが協力してくれない
- 親との関係が悪く、直接介護できない
- 介護と仕事を両立できるか不安
- 施設への入居を検討したい
厚生労働省の案内によると、相談や支援は無料です。担当するセンターは親の住所によって異なるため、親が住んでいる市区町村のホームページや介護サービス情報公表システムで確認します。
地域包括支援センターへの具体的な相談方法
相談するときに、最初から介護の知識を身につけておく必要はありません。
電話では、次のように伝えれば十分です。
「親の介護が必要になりそうですが、自分で直接介護することは難しい状況です。親と同居することも考えていません。介護保険サービスや施設利用など、家族以外の支援を受ける方法について相談したいです」
相談前に、分かる範囲で次の情報を整理しておくと話が進みやすくなります。
- 親の年齢と住所
- 現在の健康状態
- 認知症や身体機能の問題の有無
- すでに要介護認定を受けているか
- 一人暮らしか、誰かと同居しているか
- きょうだいなどの親族がいるか
- 自分が対応できること、できないこと
特に重要なのは、「自分では直接介護できない」という事情を最初にはっきり伝えることです。
単に「介護について教えてほしい」と伝えるよりも、希望する支援体制が具体的になります。
介護保険サービスを利用する仕組み
介護保険は、家族だけで介護を抱え込まないための重要な制度です。
原則として、次の条件に該当する人が利用できます。
- 65歳以上: 原因を問わず、要支援・要介護認定を受けた場合に利用できます。
- 40歳から64歳: 医療保険に加入しており、加齢に伴う特定疾病が原因で要支援・要介護認定を受けた場合に利用できます。
介護保険サービスを利用するまでの基本的な流れは次のとおりです。
市区町村または地域包括支援センターに相談
介護が必要な親の状態を説明し、申請方法を確認します。
要介護認定を申請
市区町村の介護保険担当窓口などで申請します。
認定調査と主治医意見書
調査員による訪問調査と医師の意見書などを基に審査されます。
要支援・要介護の認定
状態に応じて要支援1・2、要介護1~5などに区分されます。
ケアマネジャーなどとサービスを調整
ケアプランを作成し、利用する介護サービスを決めます。
利用できる主なサービスには、訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具貸与、住宅改修などがあります。
親が自宅で暮らし続けたい場合でも、家族が毎日通って介護する必要はありません。訪問サービスや通所サービスを組み合わせることができます。
ケアマネジャーに伝えるべきこと
要介護認定を受けた後は、ケアマネジャーに相談しながら介護サービスを調整できます。
ケアマネジャーは、本人の状態や希望、家族の状況を踏まえてケアプランを作成し、事業者との調整やサービス利用の管理を行う専門職です。
相談するときは、遠慮して自分の負担を小さく伝えないことが大切です。
例えば、次のような希望を具体的に伝えます。
- 平日は仕事があるため対応できない
- 親と同居する予定はない
- 身体介護は専門事業者に任せたい
- 緊急時の対応を家族だけに依存しない形にしたい
- 介護費用として毎月出せる金額には上限がある
- きょうだいとの調整が必要
介護サービスは、家族の善意や無償労働を前提にするものではありません。介護者自身の生活も考慮したプランを相談しましょう。
【きょうだい・費用・施設】親の介護負担は誰がどこまで負うべき?
親の介護を自分一人で引き受けないためには、きょうだいや専門事業者との役割分担が欠かせません。
特に、費用と実際の介護作業を分けて考えることが重要です。
きょうだい間の介護費用は50対50でなければならない?
親に複数の子どもがいる場合でも、介護費用を必ず均等に負担しなければならないという一律の法律上の割合はありません。
例えば、兄弟が2人いても、収入や生活状況が大きく違えば、同じ金額を負担することが現実的とは限りません。
また、金銭負担だけでなく、実際の介護に費やす時間も考慮する必要があります。
話し合いでは、次のような役割分担が考えられます。
- 近くに住むきょうだい:施設の見学や緊急時の連絡
- 遠方に住むきょうだい:介護費用や交通費の負担
- 時間に余裕のあるきょうだい:役所の手続きや病院との連絡
- すべてのきょうだい:親の状況確認や重要事項の意思決定
もちろん、これは一例であり、実際の負担は各家庭の事情によって調整します。
民法878条・879条に基づき、扶養する順序や程度について協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に扶養請求調停を申し立てる方法もあります。
介護費用を話し合うときに決めておきたいこと
費用の話を曖昧にしたまま介護を始めると、後からトラブルになりやすくなります。
最低限、次の項目を整理しておきましょう。
1. 親自身の年金や預貯金から支払える金額
2. 介護保険サービスの自己負担額
3. 施設を利用する場合の入居費用
4. 医療費や日用品などの追加費用
5. きょうだいが負担できる金額
6. 毎月の支払いを管理する人
7. 介護度が上がった場合の追加負担
親自身の年金や資産、利用できる公的制度を先に確認し、子どもが負担する金額を必要以上に膨らませないことも大切です。
親を介護施設に入れる選択肢と入居条件
親の介護を直接引き受けたくない場合、介護施設への入居も選択肢になります。
代表的な施設は次のとおりです。
特別養護老人ホーム(特養)
常時介護が必要な高齢者を対象とする施設です。新規入所は原則として要介護3以上ですが、在宅生活が困難な事情がある場合には、要介護1・2でも特例的に入所が認められることがあります。
介護老人保健施設(老健)
リハビリテーションや医療的な管理を受けながら、在宅復帰を目指す施設です。原則として要介護1~5の人が対象です。
介護医療院
長期的な療養が必要な人に対し、医療と介護、日常生活上の支援を提供する施設です。
有料老人ホーム
民間事業者などが運営する高齢者向けの住まいです。入居条件やサービス内容、費用は施設によって異なります。
介護施設の費用は何で決まる?
施設の費用は、施設の種類、居室、要介護度、所得、地域などによって変わります。
一般的には、次の費用を確認する必要があります。
- 入居一時金:施設によって必要な場合と不要な場合がある
- 施設サービス費:介護保険の自己負担分
- 居住費:個室や相部屋などで異なる
- 食費:施設の設定や制度上の基準による
- 日常生活費:理美容代、日用品代など
介護保険サービスの自己負担は原則1割で、一定以上の所得がある場合は2割または3割です。
また、所得などの条件を満たせば、食費・居住費の負担限度額認定や高額介護サービス費による負担軽減を利用できる場合があります。
施設のパンフレットに記載された月額費用だけで判断せず、介護保険の自己負担、居住費、食費、追加料金を含めた総額を確認することが大切です。
介護を支える関係者と役割の整理
親の介護を誰が担うのか、制度上の位置づけと実際の役割を整理すると、次のようになります。
| 関係者 | 主な役割 | 介護負担の考え方 |
|---|---|---|
| 親本人 | 自身の生活や介護について意思表示する | 年金・資産なども含めて生活設計する |
| 子ども | 必要に応じて扶養や生活上の支援を検討する | 直接介護や同居が一律に義務付けられるわけではない |
| きょうだい | 扶養や実務の分担を話し合う | 収入や生活状況などを踏まえて調整する |
| 地域包括支援センター | 介護相談、制度案内、関係機関との連携 | 家族の相談や支援体制づくりをサポートする |
| ケアマネジャー | ケアプラン作成、サービス調整 | 専門サービスの組み合わせを支援する |
| 介護事業者・施設 | 訪問介護や施設介護などを提供する | 契約・介護保険制度に基づいてサービスを提供する |
このように、親の介護は子どもだけで完結させる問題ではありません。親本人、親族、公的機関、介護事業者がそれぞれの役割を担う仕組みをつくることが現実的です。
【仕事を辞めない方法】介護休業・介護休暇と仕事の両立制度を解説
親の介護を理由に仕事を辞めようと考えている人は、退職を決める前に育児・介護休業法に基づく制度を確認してください。
2025年4月から段階的に施行された法改正により、介護離職を防ぐための企業側の対応も強化されています。
介護休業は通算93日まで取得できる
介護休業は、要介護状態にある対象家族を介護するために取得できる休業制度です。
主な内容は次のとおりです。
- 対象家族1人につき通算93日まで
- 3回まで分割取得できる
- 父母、祖父母、配偶者、子、兄弟姉妹などが対象
- 原則として休業開始予定日の2週間前までに申し出る
重要なのは、介護休業が単に自分で介護をするための休みではないという点です。
厚生労働省は、休業期間を介護サービスの手配や家族間の役割分担など、仕事と介護を両立する体制を整える期間として活用することを案内しています。
雇用保険の一定の要件を満たす場合には、介護休業給付金として休業開始時賃金日額の67%相当額が支給されます。
介護休暇は通院や手続きにも利用できる
介護休業ほど長期間ではなく、短時間の対応が必要な場合には介護休暇が利用できます。
| 項目 | 制度の内容 |
|---|---|
| 対象家族が1人 | 年間5日まで |
| 対象家族が2人以上 | 年間10日まで |
| 取得単位 | 1日または時間単位 |
| 主な利用目的 | 通院の付き添い、介護手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせ |
| 給与 | 有給・無給は会社の規定による |
2025年4月からは、労使協定によって介護休暇の対象外とできる労働者から、継続雇用期間6か月未満の労働者が除外されました。
なお、週の所定労働日数が2日以下の労働者については、一定の条件のもとで対象外とすることができます。
2025年改正で会社に義務付けられた対応
2025年4月から、企業には介護離職を防ぐための取り組みが義務付けられています。
主な内容は次のとおりです。
- 介護休業や両立支援制度を利用しやすい職場環境の整備
- 介護に直面した労働者への制度の個別周知
- 介護休業などを利用する意向の個別確認
- 40歳など、介護に直面する前の段階での制度情報の提供
また、介護のためのテレワーク導入も事業主の努力義務となっています。
そのため、親の介護が始まったら、勤務先の人事部門や総務部門に相談し、利用できる制度を確認が必要です。
仕事と介護を両立するための現実的な方法
介護と仕事を両立するには、家族が毎日対応する仕組みをつくらないことがポイントです。
例えば、次のような組み合わせが考えられます。
- 平日の日中は訪問介護を利用する
- 日中の活動や食事はデイサービスを活用する
- 家族の出張や休息が必要な場合はショートステイを利用する
- 通院の付き添いはきょうだいと交代する
- 介護休暇は役所の手続きや面談に使う
- 介護休業は長期的な介護体制を整えるために使う
退職すると収入だけでなく、社会保険や将来の年金、再就職の可能性にも影響します。
介護が必要になったからといって、すぐに仕事を辞める必要はありません。
【2026年最新】親の介護で利用できる支援制度と今後の変更点
2026年に親の介護を考える際は、介護保険制度だけでなく、仕事との両立支援や介護施設の利用者負担に関する動向も確認しておきたいところです。
2026年度の介護報酬改定
2026年度には、2027年度の通常改定を待たずに、介護報酬の期中改定が実施されました。
厚生労働省の公表資料によると、改定率はプラス2.03%です。
主な目的は、介護職員や介護従事者の処遇改善、人材確保、介護サービス事業者の経営環境への対応などです。
2026年6月施行の改定では、処遇改善加算の対象となる職種が広がり、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援などにも新たな加算が設けられています。
ただし、これは家族介護者に直接給付金が支給される制度ではありません。介護サービスを提供する側の人材確保やサービス提供体制を支えるための改定です。
利用者側は、契約している事業所に新しい料金や自己負担額を確認しておきましょう。
2026年も活用できる主な介護支援制度
現在利用を検討できる制度を整理します。
| 制度 | 主な内容 | 利用時の確認事項 |
|---|---|---|
| 介護保険 | 訪問介護、デイサービス、施設サービスなど | 要介護認定などの条件 |
| 地域包括支援センター | 介護相談や制度案内 | 親の住所を担当する窓口 |
| 介護休業 | 対象家族1人につき93日まで | 会社への申出方法 |
| 介護休暇 | 年間5日または10日 | 対象家族と取得要件 |
| 介護休業給付金 | 一定条件で賃金日額の67%相当 | 雇用保険の加入・支給要件 |
| 高額介護サービス費 | 月ごとの介護保険自己負担額を軽減 | 所得区分と上限額 |
| 負担限度額認定 | 対象者の施設利用時の食費・居住費を軽減 | 所得・資産などの要件 |
制度ごとに申請先が異なるため、介護保険については市区町村、仕事に関する制度については勤務先やハローワークなどに確認することが必要です。
2026年の介護制度で注意したいこと
2026年は介護保険制度の見直しに関する議論も続いています。
利用者負担の2割負担の対象範囲やケアマネジメントの利用者負担などは、制度改革の検討事項として取り上げられています。
ただし、検討されている内容と、すでに施行されている制度は別です。
介護費用を計算するときは、将来の変更案を現在の負担額として扱わず、自治体や介護事業者が案内する現行制度を確認してください。
【プロの結論】親の介護をしたくない人が優先すべき3つの判断基準
介護問題で最も避けたいのは、周囲からの期待や罪悪感だけで、生活を大きく変えてしまうことです。
判断するときは、次の3つを優先してください。
1. 自分ができることと、できないことを明確にする
金銭的な支援はできるが、身体介護はできない。月に1回の面会はできるが、同居はできない。このように支援できる範囲を具体的に決めます。
2. 親の生活を家族以外の支援につなぐ
介護保険、地域包括支援センター、ケアマネジャー、介護施設などを組み合わせます。家族だけで対応することを前提にしないことが大切です。
3. 自分の生活を維持できる仕組みをつくる
仕事、健康、家庭、経済状況を犠牲にしないことを基本にします。必要なら弁護士や社会福祉士などにも相談し、扶養義務や家族間の対立を整理します。
親の介護をしない選択と、親の生活を放置することは同じではありません。
自分が直接介護をしなくても、専門職に支援を依頼し、親の安全を確保する方法はあります。
【親の介護をしたくない】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:親の介護をしたくない場合、法律上拒否できますか?
A1:親と同居したり、入浴や排せつなどの身体介護を自分で行ったりすることが、一律に義務付けられているわけではありません。ただし、民法877条に基づく扶養義務はあります。具体的な扶養の程度や方法は、親の必要性や自分の資力などを踏まえて判断されます。
Q2:親の介護を拒否すると、逮捕されたり罰金を科されたりしますか?
A2:成人した子どもが親の直接介護をしないという理由だけで、直ちに逮捕や処罰の対象になるわけではありません。ただし、すでに保護や介護を引き受けている場合などは、個別の法的責任が問題になる可能性があります。親の生命や安全に危険がある場合は、自治体や地域包括支援センターなどに速やかに連絡してください。
Q3:親と絶縁状態でも扶養義務はありますか?
A3:親子関係が法律上存在する限り、疎遠や絶縁状態だけで民法877条の扶養義務が自動的になくなるわけではありません。ただし、扶養の程度や方法を決める際には、当事者の経済状況や生活状況など、個別の事情が考慮されます。虐待などの過去がある場合は、その経緯を専門家に相談してください。
Q4:長男や長女は親の介護を優先しなければなりませんか?
A4:長男・長女という出生順位だけで、ほかのきょうだいより重い介護義務が自動的に発生するわけではありません。家族間で役割を話し合い、それぞれの収入や生活状況に応じて負担を調整できます。
Q5:きょうだいが親の介護費用を払ってくれない場合はどうすればよいですか?
A5:最初に、親の年金や預貯金、介護サービス費用などを整理し、必要な支援額を明確にしましょう。それでも話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の扶養請求調停を利用する方法があります。
Q6:親の介護をしたくない場合、施設に入ってもらうことはできますか?
A6:介護施設への入居は選択肢の一つです。ただし、本人の意思や判断能力、施設の入居条件、費用などを確認する必要があります。特養は原則要介護3以上など、施設によって条件が異なります。地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してください。
Q7:介護のために仕事を辞める必要はありますか?
A7:必ずしも退職する必要はありません。介護休業、介護休暇、短時間勤務、残業免除などの制度と介護保険サービスを組み合わせる方法があります。まずは勤務先の人事担当者に利用できる制度を確認しましょう。
まとめ:親の介護をしたくないなら、一人で背負わない選択を
親の介護をしたくないと思うことは、決して珍しいことではありません。
2025年の国民生活基礎調査では、主な介護者の46.1%が同居しており、75歳以上同士の老老介護も37.1%に達しています。家族が介護を担う現実は依然として大きく、介護する側の負担をどう軽減するかが重要な課題になっています。
民法877条は親子や兄弟姉妹の扶養義務を定めていますが、子どもに同居や直接介護を一律に強制するものではありません。扶養の程度や方法は、それぞれの経済状況や生活事情を踏まえて判断されます。
親の介護を自分で引き受けない場合には、次の順番で行動することをおすすめします。
1. 親の健康状態と生活状況を確認する。
2. 親の住所を担当する地域包括支援センターに相談する。
3. 介護保険の申請や認定を進める。
4. ケアマネジャーと相談して介護サービスを整える。
5. きょうだいと費用や実務の分担を話し合う。
6. 施設入居や仕事との両立制度も検討する。
親の介護をするか、しないかという二択に追い込まれる必要はありません。
自分が直接介護をしないことと、親の生活を支える方法を探すことは両立できます。
親の人生と同じように、自分自身の人生も大切にしてください。無理をして共倒れになる前に、専門家や公的制度を頼り、自分が継続できる範囲で支援する体制を整えることが、親にとっても子どもにとっても現実的な選択です。