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選挙の供託金没収とは?没収ラインの計算式と金額一覧・制度の是非を徹底解説

氷室 凪 氷室 凪 • 更新: • 公開: • 読了約 10 分
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国政選挙や統一地方選挙、各種首長選挙の開票速報で頻繁にトレンド入りするキーワードが「供託金没収」です。2024年の東京都知事選挙で過去最多の56人が乱立し、大半の候補者の供託金が没収された事例をはじめ、各種選挙が実施されるたびにその金額や返還基準が注目を集めています。

公職選挙法に基づき、売名目的や無責任な乱立を防ぐ目的で設けられているこの制度ですが、「世界的に見て高すぎる」「若者や資金力のない市民の政治参画を阻んでいる」といった議論も絶えません。本稿では、供託金没収の法的根拠や選挙ごとの没収ライン、返還条件から最新の論点までを詳細に整理してお届けします。

【制度の基礎知識】そもそも供託金没収とは何か?目的と仕組みの全貌

供託金没収

公職選挙法に基づき、選挙に立候補する人物が立候補届出の前に法務局などの供託所に預け入れなければならない金銭が供託金です。日本における供託金制度の主たる目的は、売名目的の出馬や当選の見込みが極めて薄い候補者が無秩序に乱立することを防ぎ、選挙事務の適正な運営を保つことにあります。

立候補者が開票の結果、法律で定められた「供託金没収点(没収ライン)」以上の得票数を獲得した場合には、当選・落選を問わず原則として全額が返還されます。しかし、この没収点に1票でも届かなかった場合、預け入れた供託金は全額が没収され、国政選挙なら国庫、地方選挙なら当該地方自治体の歳入として納付される仕組みです。

なお、候補者が無投票当選となった場合や、選挙執行前に正式な手続きを踏んで立候補を辞退した場合には、供託金は全額返還されます。一方で、一定の得票を得られなかった落選者は、選挙運動費用を自己負担したうえでさらに供託金までも失うという、いわゆる二重の財政的打撃を被ることになります。

【選挙別一覧表】供託金額と没収ラインの計算式・基準一覧

供託金の金額および没収ラインの計算式は、立候補する選挙の種別によって公職選挙法第92条・第93条で厳格に規定されています。特に首長選と議会議員選挙では、定数の有無により没収点の算出式が大きく異なる点が特徴です。

選挙種別 供託金額(1人あたり) 供託金没収点(没収ライン)の計算基準
衆議院小選挙区 300万円 有効投票総数 × 10分の1 未満
衆議院比例代表 600万円(重複立候補は300万円) 名簿届出政党の当選人数等に応じた所定計算式
参議院選挙区 300万円 有効投票総数 ÷ 選挙区の議員定数 × 8分の1 未満
参議院比例代表 600万円 政党の得票総数および当選人数に応じた所定計算式
都道府県知事 300万円 有効投票総数 × 10分の1 未満
都道府県議会議員 60万円 有効投票総数 ÷ 選挙区の議員定数 × 10分の1 未満
政令指定都市市長 240万円 有効投票総数 × 10分の1 未満
政令指定都市議会議員 50万円 有効投票総数 ÷ 選挙区の議員定数 × 10分の1 未満
一般市区長 100万円 有効投票総数 × 10分の1 未満
一般市区議会議員 30万円 有効投票総数 ÷ 選挙区の議員定数 × 10分の1 未満
町村長 50万円 有効投票総数 × 10分の1 未満
町村議会議員 15万円 有効投票総数 ÷ 選挙区の議員定数 × 10分の1 未満

例えば、有効投票総数が10万票の市区長選挙の場合、有効投票総数の10分の1である1万票が没収ラインとなります。得票数が9,999票以下であれば、預けた100万円は全額没収となります。一方、定数20名の市議選で有効投票総数が6万票だった場合、60,000 ÷ 20 × 0.1 = 300票が没収ラインとなります。

【経緯解説】過去の注目選挙に見る供託金没収の実態と社会的反響

近年、特に大きな社会的議論を巻き起こしたのが、過去最多となる56人が立候補した2024年東京都知事選挙です。この選挙では、上位争いを演じた主要候補を除く大半の候補者が有効投票総数の10分の1に届かず、供託金(1人あたり300万円)を没収される結果となりました。都知事選全体で没収された供託金の総額は1億円を超え、地方自治体の選挙としては異例の没収規模を記録しました。

この選挙では、ポスター掲示場の商業利用疑惑や奇抜な政見放送を展開する候補者が続出し、「売名やPR目的で出馬する者にとって、300万円は安価な広告費に過ぎないのではないか」という批判が噴出しました。本来、乱立を防ぐための参入障壁として機能するはずの供託金が、インターネット動画やSNSでのインプレッション獲得を狙う勢力にとっては抑止力として十分に働いていないという新たな課題が浮き彫りになった瞬間でした。

一方で、国政選挙においても小選挙区制の導入以降、野党の候補者一本化が進まない選挙区で第3勢力や諸派の候補が10分の1に届かず300万円を没収されるケースが日常的に発生しています。これにより、政党助成金を得られない小規模な地域政党や無所属の市民候補が深刻な活動資金難に追い込まれる事態が繰り返されています。

【深層分析】なぜ日本の供託金は世界一高いのか?憲法問題と引き下げ論争

諸外国の選挙制度と比較すると、日本の供託金額は国際的にも突出して高額であることが知られています。イギリス下院の供託金は約500ポンド(約10万円程度)、カナダでは供託金制度そのものが裁判で違憲と判断されて廃止されました。フランスやドイツ、アメリカの連邦議会選挙でも、数百万単位の金銭を事前供託させる制度は採用されておらず、有権者の署名集め(推薦人署名)を立候補要件とするのが一般的です。

こうした国際的標準と照らし合わせ、日本の制度に対しては憲法第14条(法の下の平等)および憲法第44条(議員の資格における財産制限の禁止)に抵触するのではないかという違憲訴訟が過去に幾度となく提起されてきました。裁判所はこれまで「国会の裁量権の範囲内」として合憲判断を維持していますが、法学者や人権団体からは「財力による実質的な被選挙権の侵害」「若年層や女性の政界進出を阻む最大の障壁」としての批判が根強く存在します。

現状の供託金制度には、「参入障壁が高すぎて多様な民意が政治に反映されない」という問題と、「金銭障壁だけでは現代のSNS型売名出馬を阻止できない」という構造的な矛盾が生じています。そのため、現行の金額を引き下げる代わりに一定数以上の推薦人署名を必須とする制度改革案など、抜本的な法改正に向けた議論が各方面で模索されています。

【ネットの反応】有権者と政治関係者が寄せるリアルな評価

開票速報のたびにSNSやネット掲示板を賑わせる供託金没収のニュースですが、世論の受け止め方は大きく二分されています。

制度を支持・強化すべきとする立場からは、「もし供託金がなければ、数百人規模の候補者が乱立して投票用紙や開票システムがパンクする」「税金で賄われる選挙公報やポスター掲示場、政見放送の費用を考えれば、一定の自己負担やペナルティは当然だ」「売名目的のYouTuberやインフルエンサーが増えている以上、むしろ没収ラインを厳格化すべき」といった現実的な運営面への配慮を訴える声が多く見られます。

一方で、制度の見直しや廃止を求める立場からは、「普通のサラリーマンや子育て世代が立候補しようとしても、数百万円の没収リスクを背負うのは不可能」「実質的に富裕層や大政党の支援を受けた者しか出馬できない世襲優遇システムになっている」「没収された供託金が自治体の収入になる構造も、どこか本末転倒ではないか」といった、民主主義の根幹に関わる不公平感を訴える指摘が相次いでいます。

【供託金没収】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:没収された供託金はどこへ行くのですか?
A1:衆議院・参議院の国政選挙で没収された供託金は国の一般会計(国庫)に歳入として組み入れられます。都道府県知事選や県議選、市区町村の首長・議員選挙などの地方選挙で没収された供託金は、それぞれの地方自治体の歳入となります。

Q2:落選しても供託金が返ってくるケースはありますか?
A2:はい、返還されます。落選した場合であっても、開票結果が各選挙で定められた「供託金没収点」以上であれば、納付した供託金は全額返還されます。当選か落選かではなく、法定の得票ラインを超えたかどうかが返還の唯一の基準です。

Q3:供託金の返還手続きはどのように行われますか?
A3:選挙終了後、選挙管理委員会から交付される「供託原因消滅証明書」を添えて、預託先の法務局(供託所)に請求手続きを行います。審査完了後、指定した銀行口座へ供託金が還付されます。

まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準

供託金没収は、選挙という公的な舞台の品位と秩序を保つために設けられたセーフガードであると同時に、志を持つ一般市民の挑戦を阻むハードルとしても機能し続けています。2027年の統一地方選挙や今後の国政選挙を見据えて出馬を検討する候補者にとって、自身が挑戦する選挙区の有権者数・過去の投票率・有効投票総数を正確にシミュレーションし、没収ラインを明確に把握しておくことは資金計画上の最重要事項です。

また、インターネット社会の進展に伴い、金銭による制限だけでは防ぎきれない選挙運動のあり方が問われる中、今後は供託金額の引き下げと署名集め要件の導入など、時代に即した公職選挙法の改正議論がさらに熱を帯びていくとみられます。

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