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【あらすじ】三蔵法師が孫悟空と出会う前、妖怪ハンターだった時代の物語

水無月 慧 水無月 慧 • 更新: • 公開: • 読了約 19 分
目次

玄奘はなぜ妖怪退治を始めたのか

物語の舞台は、妖怪が人間を襲い、各地で恐怖を振りまいている古代中国。主人公の玄奘は、後に三蔵法師と呼ばれる僧侶だが、この時点ではまだ悟りを開いていない若き妖怪ハンターである。

彼の特徴は、武力で妖怪を倒すのではなく、「わらべ唄三百首」を歌い、妖怪の心に残る善性を呼び覚ますという独特の方法を信じていることだ。

しかし、理想と現実は簡単には一致しない。

川辺の村で水の妖怪が人々を襲った際も、玄奘は妖怪の心を改めさせようとするが、思うようにいかない。そこへ現れたのが、強力な妖怪ハンターである女性・段だった。

段は玄奘とは対照的に、実力と大胆な行動で妖怪を捕らえる人物。玄奘を助けたことをきっかけに、2人の関係が始まる。

段との出会いが玄奘の価値観を変えていく

段は玄奘の純粋さと、妖怪さえも救おうとする姿勢に興味を持つ。

その後、2人は人間に化けた豚の妖怪など、さまざまな魔物と対峙する。玄奘は段の戦闘能力に助けられる一方、段もまた玄奘の優しさに惹かれていく。

ただし、玄奘は修行と悟りを優先しており、段の恋愛感情に素直に応えることができない。

この恋愛要素は、単なるラブコメではない。後に三蔵法師が大きな慈悲を理解するための、重要な精神的試練として機能している。

孫悟空との遭遇へ

師匠から新たな課題を与えられた玄奘は、仏によって封印されている強大な妖怪・孫悟空を探すことになる。

ここで登場する孫悟空は、一般的な作品で描かれる正義感の強いヒーローとはまったく異なる。

500年間封印されていた危険な存在であり、圧倒的な力と狡猾さを備えている。

玄奘は悟空の力を利用しようとするが、その判断が大きな悲劇につながっていく。

【キャスト一覧】玄奘・段・孫悟空を演じた俳優と役柄

西遊記はじまりのはじまり

本作の魅力を支えているのが、香港・中国映画界で活躍する俳優たちだ。

特に玄奘役のウェン・ジャンと段役のスー・チーは、性格も戦い方も異なる2人の人物像を印象的に表現している。

主要キャスト・登場人物の関係

登場人物 出演俳優 役柄・特徴
玄奘(三蔵法師) ウェン・ジャン 善性を信じ、わらべ唄で妖怪を救おうとする青年
段 スー・チー 高い戦闘能力を持つ女性妖怪ハンター。玄奘に恋心を抱く
孫悟空 ホアン・ボー 仏に封印されていた強大な妖怪
空虚王子 ショウ・ルオ 個性的な言動と独特の存在感を持つ人物
沙悟浄につながる水妖怪 リー・シャンチン 物語序盤で玄奘と対峙する水の妖怪
師匠 チェン・シーハン 玄奘に修行と悟りの道を示す存在

ウェン・ジャン:若き日の玄奘を演じる

ウェン・ジャンは、後に三蔵法師となる玄奘を演じる。

本作の玄奘は、一般的な西遊記に登場する落ち着いた高僧とは異なる。妖怪に襲われれば逃げ惑い、戦闘では段に助けられることも多い。

それでも他者を救おうとする信念だけは揺るがない。

弱さと純粋さを併せ持つ主人公を演じることで、悟りに至るまでの成長が物語の中心に据えられている。

スー・チー:映画オリジナルのヒロイン・段

段は原作小説の主要人物ではなく、映画独自のキャラクターだ。

演じるスー・チーは、アクションとコミカルな演技を両立させ、玄奘とは正反対の価値観を持つ女性を表現している。

段の魅力は、単に強い女性というだけではない。

玄奘に対して積極的に愛情を示しながらも、彼の信念を理解しようとする複雑な感情が描かれている。

物語後半の展開を考えると、彼女は玄奘の精神的成長に欠かせない存在だ。

ホアン・ボー:従来のイメージを覆す孫悟空

ホアン・ボーが演じる孫悟空は、本作の妖怪描写を象徴する存在だ。

一般的な映像作品のような親しみやすい猿の英雄ではなく、恐ろしさと不気味さを前面に出した造形になっている。

物語終盤に登場する彼の圧倒的な力は、作品のアクション面でも大きな見どころとなる。

ショウ・ルオ:空虚王子役

ショウ・ルオが演じる空虚王子も、本作の独特な笑いを構成する重要なキャラクターだ。

妖怪退治という緊張感のある物語に、チャウ・シンチー作品らしい奇妙なユーモアを持ち込んでいる。

日本語吹き替えキャストも豪華

日本語吹き替え版では、次の声優・俳優が参加している。

- 玄奘:斎藤工
- 段:貫地谷しほり
- 孫悟空:山寺宏一
- 猪八戒:近藤春菜
- 沙悟浄:箕輪はるか
- 空虚王子:神谷浩史
- 足じぃ:羽佐間道夫

特に山寺宏一や神谷浩史など、声の表現力に定評のある出演者が参加している点も注目したい。

【ネタバレ解説】段の死と孫悟空の結末に隠された意味

重大なネタバレあり

本作を単なる妖怪退治映画だと思って鑑賞すると、終盤の展開に驚かされる。

特に重要なのが、段の死と、玄奘が悟りを得るまでの過程だ。

段は最後にどうなるのか?

段は玄奘に何度も愛情を伝えるが、玄奘は修行を理由に彼女の気持ちを受け入れない。

その後、孫悟空を利用して豚の妖怪を退治しようとする計画が動き出す。

段は自ら危険な役割を引き受け、玄奘を助ける。しかし、孫悟空が封印から解き放たれると、状況は一変する。

悟空の圧倒的な力の前に段は致命傷を負う。

玄奘はここで初めて、自分が段を愛していたことを認める。しかし、その告白が届いた直後、段は悟空によって命を奪われてしまう。

この場面は、物語の大きな転換点となる。

わらべ唄の本当の意味

段は物語の途中で、玄奘が大切にしていたわらべ唄の本を破ってしまう。

しかし、後に彼女はその本を拾い集め、玄奘のもとへ戻している。

彼女は文字を読むことができず、ページを元どおりに並べることもできなかった。それでも、破れた本を大切に直そうとした。

玄奘はその本を見直すことで、並べ替えられた言葉が仏の教えにつながる経文になっていることに気づく。

ここに、段の存在が持つ重要な意味がある。

玄奘が信じていた慈悲の心は、妖怪に対してだけ向けられるものではない。人間同士の愛情や喪失を経験することで、その意味が深まっていく。

孫悟空はどうやって倒される?

悟空の力は玄奘の手に負えるものではない。

そこで玄奘は仏に助けを求め、仏の巨大な手によって悟空は制圧される。

さらに玄奘は、段が持っていた金色の指輪状の武器を悟空にはめる。

それが後に孫悟空の頭を締めつける緊箍児(きんこじ)へとつながる。

つまり、一般的な西遊記でおなじみの悟空の頭の輪には、本作独自の悲しい由来が設定されている。

最後に玄奘は三蔵法師となる

段との別れを経験した玄奘は、苦しみや悲しみを通して悟りへの道を理解する。

そして、水の妖怪は沙悟浄、豚の妖怪は猪八戒、孫悟空は悟空として、それぞれ人間の姿を得て玄奘とともに旅立つ。

ここで初めて、私たちが知っている西遊記の一行が成立する。

ラストでは、玄奘が砂漠の向こうに段の面影を見る描写もある。

これは単純な恋愛の成就ではなく、失った人への思いを抱えながら進んでいく玄奘の姿を表現している。

【原作との違い】チャウ・シンチーが西遊記を大胆に再構築した理由

本作を理解するうえで重要なのは、呉承恩の小説『西遊記』をそのまま映画化した作品ではないという点だ。

原作の世界観や登場人物を引き継ぎながら、物語の始まりそのものを作り直している。

原作と映画の主な違い

比較項目 原作小説『西遊記』 映画『はじまりのはじまり』
物語の時期 孫悟空の誕生や三蔵法師の旅立ちから始まる 三蔵法師が弟子と出会う以前
玄奘 仏教の経典を求める僧侶 未熟な若き妖怪ハンター
段 主要人物として登場しない 玄奘の成長に関わるオリジナルヒロイン
孫悟空 石から生まれた猿の妖仙 仏に封印された危険な妖怪
猪八戒・沙悟浄 旅の途中で仲間になる 妖怪として登場し、最後に仲間となる
作品の主題 修行、冒険、仏教的な教え 慈悲、愛、喪失、悟り

最大の違いは三蔵法師の人物像

一般的な西遊記では、三蔵法師はすでに仏教の教えを信じる僧侶として描かれる。

ところが本作では、まだ精神的に未熟な青年として登場する。

妖怪を倒す能力も低く、他のハンターから見れば頼りない存在だ。

それでも彼は妖怪の中にも善なる心があると信じている。

この設定によって、三蔵法師がなぜ慈悲を重んじる人物になったのかという疑問に、映画独自の答えを与えている。

段は原作に登場する人物なのか?

段は映画オリジナルのキャラクターだ。

原作の三蔵法師には、映画の段と同じ役割を持つ恋愛相手は登場しない。

そのため、玄奘と段の恋愛関係はチャウ・シンチーによる創作上の重要な要素である。

段の存在によって、三蔵法師の精神的成長が抽象的な修行だけではなく、具体的な人間関係や喪失を通して描かれるようになった。

妖怪のデザインも従来の西遊記とは異なる

本作の妖怪描写は、従来の子ども向け西遊記とは大きく異なる。

水の妖怪は不気味な水中生物として登場し、豚の妖怪も巨大で恐ろしい姿を見せる。

孫悟空についても、親しみやすい猿の姿より、怪物としての恐怖を強調している。

この方向性は、チャウ・シンチーが得意とする誇張された映像表現と相性がよい。

コミカルな場面とグロテスクな妖怪描写が同じ作品に共存することで、独特の世界観が生まれている。

【評価・評判】西遊記ファンと映画ファンで感想が分かれる理由

本作は公開当時から、従来の西遊記のイメージを覆す作品として話題になった。

2026年11月時点で参照できる映画レビューサイトの評価を見ると、一定の支持を集める一方、演出や物語の好みで評価が分かれる傾向も確認できる。

国内外の評価を比較

評価サイト 評価 読み取れる傾向
Filmarks 3.4/5.0 日本の鑑賞者による感想が豊富
映画.com 3.5/5.0 アクションや演出への評価
Rotten Tomatoes 批評家94% 海外批評家から高い支持
Rotten Tomatoes 観客69% 観客側では評価に幅がある
Metacritic 68/100 批評家レビューは概ね好意的

各サイトで公開されている集計値。投稿数や集計時期、評価方式が異なるため、単純な順位比較には適さない。

高く評価されているポイント

1. チャウ・シンチーらしいギャグと映像表現

『少林サッカー』『カンフーハッスル』で知られる監督らしく、常識を超えた展開や誇張されたアクションが楽しめる。

真剣な場面でも突然コミカルな演出が入り、作品全体に独特のテンポが生まれている。

2. 妖怪のビジュアルとアクション

従来の西遊記では見られない妖怪の造形が、作品の個性を際立たせている。

特に孫悟空の登場以降は、映像の迫力が大きく増していく。

3. 笑いだけでは終わらない物語

前半のコメディ色が強いため、後半の段をめぐる展開との落差が印象に残る。

単純な妖怪退治の物語にとどまらず、愛情と喪失を描いている点が評価されている。

批判的な意見が出るポイント

一方で、すべての観客に受け入れられる作品ではない。

- 妖怪の造形がグロテスクで、苦手に感じる人がいる。
- ギャグが過剰で、物語に集中しにくい場面がある。
- 段と玄奘の恋愛パートが長く感じられる場合がある。
- 孫悟空の本格的な登場を期待すると、前半の展開が遅く感じられる。

Filmarksや映画.comに投稿された感想にも、独特のギャグや妖怪の描写を楽しむ声と、恋愛描写やテンポに戸惑う声の両方が見られる。

【プロの結論】この映画を評価するなら何を見るべきか

本作は、原作の再現度だけで評価する作品ではない。

重要なのは、三蔵法師という人物の内面をどのように再解釈したかという点だ。

原作の登場人物を知っている人ほど、妖怪のデザインや段の存在に驚く可能性がある。一方、チャウ・シンチー作品に慣れている人なら、独特の笑いとアクションを楽しみやすい。

つまり、西遊記の忠実な映画化を期待する人より、西遊記を素材にした大胆な娯楽映画を見たい人に向いている作品だ。

【続編・配信情報】西遊記2との関係と2026年の視聴方法

続編『西遊記2~妖怪の逆襲~』は2017年公開

『西遊記~はじまりのはじまり~』には、2017年公開の続編が存在する。

日本でのタイトルは『西遊記2~妖怪の逆襲~』。原題は「西遊2 伏妖篇」で、2017年9月8日に日本公開された。

今度の物語は、玄奘たちが天竺へ向かう旅の途中を描く。

監督はチャウ・シンチーではなく、香港映画界の巨匠ツイ・ハークが担当。チャウ・シンチーは製作と脚本に参加している。

前作と続編の違い

項目 1作目 2作目
邦題 西遊記~はじまりのはじまり~ 西遊記2~妖怪の逆襲~
原題 西遊・降魔篇 西遊2 伏妖篇
公開年 2013年製作 2017年製作
日本公開 2014年11月21日 2017年9月8日
監督 チャウ・シンチー、デレク・クォック ツイ・ハーク
製作・脚本 チャウ・シンチーら チャウ・シンチー、ツイ・ハークら
三蔵法師 ウェン・ジャン クリス・ウー
孫悟空 ホアン・ボー ケニー・リン
段 スー・チー スー・チー

続編ではキャストが変更されている

特に注目したいのは、主人公の三蔵法師と孫悟空の俳優が変更されていることだ。

- 三蔵法師:ウェン・ジャンからクリス・ウーへ
- 孫悟空:ホアン・ボーからケニー・リンへ
- 段:スー・チーが続編にも出演

そのため、1作目と2作目ではキャラクターの印象や演技の雰囲気も異なる。

ただし、続編としての物語上のつながりは保たれており、1作目の最後に始まった天竺への旅が次の物語につながっていく。

ソニー・ピクチャーズの作品紹介でも、2013年のチャウ・シンチー作品の続編として紹介されている。

2026年11月の動画配信状況

配信情報あり

日本国内の配信状況については、動画配信サービスの比較サイトJustWatchが2026年10月7日に掲載した情報で、次のサービスが視聴候補として挙げられている。

サービス 掲載されている視聴形態
Amazon Prime Video 見放題
U-NEXT 見放題
FOD レンタル
Amazon Video レンタル・購入
Apple TV Store レンタル・購入

配信契約や作品の入れ替えによって、見放題・レンタルの区分は変わることがある。視聴する直前に各サービスの作品ページで確認したい。

また、配信版以外にも、DVD・Blu-rayが発売されている。

日活のDVD商品情報によると、通常版DVDは2015年5月2日発売。日本語字幕と日本語吹き替えを収録している。

【よくある質問】西遊記~はじまりのはじまり~に関するFAQ

Q1:『西遊記~はじまりのはじまり~』は何年の映画ですか?

A1:2013年製作の中国映画です。日本では2014年11月21日に劇場公開されました。

Q2:三蔵法師役の俳優は誰ですか?

A2:ウェン・ジャンです。若き日の玄奘を演じています。日本語吹き替え版では斎藤工が担当しています。

Q3:段は原作の西遊記にも登場しますか?

A3:段は映画オリジナルのキャラクターです。原作小説の主要人物ではなく、玄奘の精神的な成長と恋愛を描くために創作されています。

Q4:孫悟空は映画の最後にどうなりますか?

A4:仏の力によって制圧され、玄奘が段の金色の輪を悟空にはめます。この輪が後の緊箍児につながります。

Q5:段は最後に死んでしまうのですか?

A5:はい。孫悟空との戦いで命を落とします。その喪失が玄奘の悟りにつながる重要な出来事になります。

Q6:続編はありますか?

A6:あります。2017年に『西遊記2~妖怪の逆襲~』が日本公開されました。監督はツイ・ハークで、チャウ・シンチーは製作・脚本を担当しています。

Q7:子どもでも楽しめる映画ですか?

A7:日本での映画レイティングはPG12です。妖怪の不気味な造形や暴力的な描写があるため、小さな子ども向けの明るい冒険映画とは異なります。鑑賞前に内容を確認することをおすすめします。

Q8:『西遊記~はじまりのはじまり~』はどこで見られますか?

A8:2026年10月の配信情報では、Amazon Prime VideoやU-NEXTなどが視聴候補として掲載されています。配信形態は変動するため、各サービスで最新情報を確認してください。

まとめ:西遊記の原点を描いたチャウ・シンチー流の異色作

『西遊記~はじまりのはじまり~』は、三蔵法師と孫悟空たちが天竺を目指す以前の物語を描いた、チャウ・シンチー独自の解釈による中国映画だ。

若き日の玄奘、映画オリジナルのヒロイン・段、そして恐ろしくも強大な孫悟空。これらの人物を通じて、従来の西遊記にはなかった愛情と喪失、慈悲と悟りの物語が展開される。

特に押さえておきたい要点は次の3つだ。

1. 玄奘の成長物語であること。 三蔵法師が最初から完成された聖人ではなく、苦悩と経験を経て悟りに至る姿が描かれている。
2. 段が物語の重要人物であること。 原作にはない彼女の存在が、玄奘の精神的成長と緊箍児の由来を結びつけている。
3. 続編につながる前日譚であること。 2017年の『西遊記2~妖怪の逆襲~』を見ることで、天竺への旅がどのように続いていくのかも楽しめる。

従来の西遊記のイメージを大切にする人には驚きの多い作品だが、チャウ・シンチーならではの笑い、アクション、そして予想外の感動を味わいたい人には見逃せない一本だ。

2013年の製作から10年以上が経過した2026年現在も、本作の面白さは色あせていない。西遊記を知っている人も、これまで本格的に触れたことがない人も、玄奘と段の出会いから始まる異色の冒険を楽しんでほしい。

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